秋の健診シーズンが終わり、検査結果がお手元に届き、子宮頚がん検診で異常が出たと受診される方が多くいらっしゃいます。
子宮頚がん検査では細胞診という検査を行います。以前はクラス分類というものでしたが、現在はベセスダシステムという評価方法に変わりました。
結果は大きく3種類に分類されます。
NILM:異常なし
ASC-US:ちょっと異常がみられるかもしれません、グレーゾーンです
それ以外:異常がみられます、精密検査を受けてください
ASC-USは日本語に訳すと意義不明な異型扁平上皮となりますが、日本語では理解しにくいです。子宮頚がんの大多数は正常→異形成→がんのように段階的に悪化します。この過程で異常が出ているのか、腟内は雑菌が多く炎症を起こすことがあり、一時的な変化で細胞に異常が出たのかをがん検診の結果のみでは判断することができません。
そこで、子宮頚がんの原因とされるHPV(ヒトパピローマウイルス)をチェックします。HPVはたくさんの種類があり、子宮頚がんの原因となるハイリスクウィルスが同定されています。ハイリスク陽性となった場合には前者の可能性があるため精密検査を行います。
異形成という段階は正常に近いところから軽度→中等度→高度と変化していきます。どの深さまで異常な細胞が入っているかでその程度を判断します。がん検診で行う細胞診は細胞の形を診る検査です。そのため深さの判断をすることはできません。細胞診の結果である程度の推測をすることは可能なのですが確定をすることができないため深さがわかる検査(組織生検)を行います。コルポスコープという機械を用いて、子宮頚部をよく観察し異常が疑われる部分を数か所、つまようじの先くらいの組織を取って検査に出します。深くはありませんが切り込んでいるため通常のがん検診より検査時の痛み、検査後の出血が多くなります。2週間ほどで検査結果が出ます。
検査結果に異常がなければ通常検査に戻ります。(細胞診の結果と乖離がある場合には少し間を開けて再度、細胞診検査を行う場合があります)
異形成の診断がついた場合には下記のフローチャートに沿って管理を行います。
異形成を治療することができるのか
軽度異形成から高度異形成以上の病変に進展するリスクは15%前後。30歳未満の若い女性では90%程度が自然消退します。HPVのハイリスク型の感染がある方の中で一部に進行がみられるため、HPVハイリスク感染例では半年毎の細胞診検査が推奨されています。
中等度異形成から高度異形成以上の病変に進展するリスクは23%前後。軽度異形成と同様に若い女性では相当数(2年で33%、5年で63%、10年で82%)が自然消退していきます。軽度異形成よりは進展リスクが高いため定期検査の頻度が短くなります。
軽度異形成~中等度異形成では自然消退をする例が多いためすぐに処置は行いません。中等度異形成でハイリスクHPV感染陽性例や、長い経過をみて自然消退しない場合や悪化が疑われる場合、ご本人の強い意志がある場合には外科的処置に進みます。
高度異形成では上皮内癌との共存がわずかながら見られる例があるため外科的処置をお勧めしています。
異形成に対するおくすりの治療は現在のところ開発されていません。治療は円錐切除もしくはレーザー蒸散という外科的な治療になります。円錐切除は子宮頚部が短縮するため妊娠時の早産リスクを上げる可能性があります。1泊から2泊の入院が必要な場合があります。検体がでるため取りきれたかどうかの判断を行うことが可能です。一方、レーザー蒸散には早産リスクを上げる可能性はありません。外来での処置が可能です。レーザー蒸散では病変を取り除くということはできません。その場で焼いて治療をするため、取り除けたかどうかの判断は経過をみないと判断できません。
円錐切除・レーザー蒸散では術後に子宮の出口が狭くなり、子宮体癌の検査が困難になる場合があります。そのため、閉経後の方や今後ご妊娠を希望されない方では子宮全摘をお勧めする施設もあります。
子宮頚がんは段階的に進行します。異形成の段階では自然消退をする可能性もあります。早期で治療を行えば、完治が望める病気です。定期的にがん検診を受けて異常が出た場合には精密検査を必ず受けてください。当院では受診当日にコルポスコープ下組織生検を行うことが可能です。